Q
医療事故の調査は、なぜ必要ですか?
A
事実関係を正確に把握し、医療機関側の法的責任の有無を検討するためです。
一般の事件では、どのような経緯で、どのような結果が発生したのか、などの事実関係を一番よく知っているのは、依頼者本人です。
しかし、医療事件では、依頼者本人が、かならずしも病状や診療経過の全てを正確に知っているわけではありません。
むしろ、診療記録(カルテ)をはじめ、重要な証拠は、医療機関側にあるのが通常です。
さらに、「医療」といっても、現在、様々な分野に細分化し、それぞれが高度に専門化しています。
この点についても医学文献等の調査を行います。
このような調査を経て、医療過誤として法的責任を問いうるのかを検討し、その後の方針を決めることが可能になるのです。
Q
医療事故の調査はどのようにするのですか?
A
診療記録(カルテ)の入手や、医学文献の調査、医療機関に対する説明会開催の申し入れや、協力医から助言を取得するなどして行います。
その結果から、医療機関の法的責任の有無や見込みを判断します。
Q
医療事故の調査には、どのくらいの時間がかかりますか?
A
医療事故の調査では、書類の取り寄せにとどまらず、協力医への助言依頼やそれに基づく法的判断を行うため、たとえば診療科が複数にまたがった場合や、転院などで複数の病院にかかった場合など、調査期間が1年を超えることもあります。
Q
医療事故の調査で過失が認められたら、その後どのように進めるのですか?
A
示談交渉、訴訟、裁判外手続(医療ADRなど)のうち、適切な方法を選択し、医療機関に法的責任を追及していくことになります。
Q
医療事故の調査で法的責任追及が困難という結論が出た場合、もう何もできないのでしょうか?
A
医療機関側に説明会の開催を求めることが考えられます。
説明会では、今回の結果が発生した理由などについて直接説明を受けるとともに、患者側の気持ちや医療機関への要望を伝えることになります。
「医療機関の説明義務」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。医療機関は、診療契約に基づいて、患者側に適切な説明を行うという説明義務を負っています(民法656,645条等)。
このような説明義務には、診療の終了後の説明も含まれています。
そのため、医療機関の説明義務の一環として、説明会の開催を求め、説明を受けることで、患者側の気持ちの整理がつくこともあります。
このように、説明会の開催の請求は、法的責任の追及がかなわない場合にも、取りうる選択肢の一つになります。
Q
証拠保全とはどのような手続きですか?
A
証拠保全手続きとは、記録の改ざん、隠匿、破棄の恐れがあるなどの場合に、裁判所を通じて、抜き打ち的に当該記録を証拠化する手続きをいいます。
Q
証拠保全手続に本人が立ち会うことは可能でしょうか?
A
証拠保全手続きで、ご本人が立ち会うことは禁止されていません。
しかし、証拠保全手続きはあくまで、改ざんなどの恐れのある証拠を、法律に従って保全するものですので、ご本人が立ち会うメリットはとくにありません。
そのため、通常は、ご本人が立ち会わないで行います。
Q
証拠保全にはどのようなメリットがありますか?
A
カルテ以外の資料を入手することが可能である点が挙げられます。
例えば、病棟日誌、医師・看護師当番表等はカルテではありませんが、重要な事実が記載されている可能性があり、証拠保全ではこのような資料も対象とすることができます。