Q
医療機関が示談に応じない場合もありますか?
A
患者側と医療機関側の認識の食い違いが大きい場合、医療機関が示談に応じないこともあります。
代表的な例として、医療事故に関する原因や責任の所在に関し、患者側は医療機関に責任があると考えているものの、医療機関側は自身に責任はないと考えている場合が挙げられます。
このような場合、訴訟や、医療ADR等、次の手段を検討することになります。
Q
示談以外に、裁判によらない解決方法はありますか?
A
民事調停や、医療ADRなどがあります。
民事調停は、裁判所を介して話し合いをする手続きです。
医療ADRは、裁判所ではない第三者を間に立てて、話し合いと合意による解決を目指す手続きです。
東京では、東京三弁護士会が共同で主催しています。
この手続きでは、患者側、医療側代理人として活動している他の弁護士がそれぞれあっせん委員として関与します。
いずれも、第三者を間に介する点で、直接の交渉である示談交渉とは異なります。
話し合いである点で、裁判とは異なります。
また、費用は裁判ほど高額になりません。
メリット・デメリットを考慮して、どの手続きを利用するかを決めていくことになります。
Q
医療訴訟の特徴とはどのようなものですか?
A
専門性、複雑性、協力医の確保の困難性が挙げられます。
【専門性】
医療訴訟は、専門訴訟といわれ、難しい分野だと言われます。
医療訴訟では、患者に発生した医療上の不幸な結果について、それが医療機関のミスよるものだと裁判所に認定してもらう必要があります。
具体的にいえば、その「不幸な結果」がどのような理由で生じたのか、そして、その理由は医療機関のミスといえるのか。
この点について、まずは患者側が究明し、医学的根拠と共に裁判所に説明する必要があります。
ここに、医学的な専門性が必要になってきます。
【複雑性】
診療行為が長期にわたり、複数の診療科にかかり、数多くの診療行為が積み重ねられていることもまれではありません。
そうなると、医療機関のどのような行為に不幸な結果の原因があったのかを、医学的観点から、緻密に検討していかなければなりません。
【証拠の偏在】
事実関係の解明のために必要な資料が患者側ではなく、医療機関側にほとんど収集・保管されているため、証拠が偏って存在しています。
【協力医の確保の必要性】
医療訴訟では、協力医とよばれる患者側の医師に協力を仰ぐ必要がありますが、これに協力してくれる医師の先生を見つけることも、容易ではありません。
以上のような理由が、医療訴訟は専門訴訟といわれ、難しい分野といわれるゆえんです。
Q
医療訴訟で、裁判はどのように進むのですか?
A
まず、患者側と医療機関側が、お互いに事故原因や法的責任の有無について、主張や証拠を提出していく点は、一般の民事訴訟と同様です。
これに加え、医療訴訟では、裁判所による鑑定が命じられることがあります。
鑑定では、裁判所により選ばれた鑑定人(医師が多いです)が、争点に関する見解を裁判所に表明します。
また、証人尋問では、関係した医師、看護師、薬剤師など医療関係者や、原告本人が、証言を行います。
その後、裁判所が判決を言い渡します。
裁判手続の適宜の段階で、裁判所が和解の勧告をすることがあり、和解が成立するケースも多いです。